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仙台高等裁判所 平成8年(ラ)72号 決定

再抗告人

織田金善

高橋しづ江

橋本日義

右三名代理人弁護士

斎藤利幸

主文

一  本件再抗告を棄却する。

二  再抗告費用は再抗告人らの負担とする。

理由

一  本件再抗告の趣旨は、「原決定を取り消し、更に相当の裁判を求める。」というものであり、その理由は、別紙「再抗告理由書」写し記載のとおりである。

二  再抗告人らの再抗告理由について

本件記録によれば、再抗告人らは、他人間の支払命令(督促手続)事件を訴訟に移行させ、その訴訟に独立当事者参加するために、当該支払命令について独立当事者参加の参加当事者として異議の申立てをしたものである。しかしながら、現行法上、支払命令に対して異議の申立てをし得るのは当該支払命令の債務者とされているものであり(民訴法四三四条二項)、訴訟に移行した場合に独立当事者参加し得る者が右異議の申立てをすることを認める規定は存しない。したがって、再抗告人らは督促手続において異議を申し立てる適格がなく、その異議の申立ては不適当であるとした原審の判断は、正当として是認することができる。所論は、違憲をも主張するが、一方審尋、書面審理主義の性質をもつ簡易迅速な督促手続について、新訴の提起の一形態である独立当事者参加をすることを認めるか、訴訟に移行した場合に独立当事者参加し得る者に訴訟に移行ささせるための異議申立権を認めるかは立法政策の問題であると解すべきであり、これを認めないからといって憲法が保障する国民の裁判を受ける権利を侵害するものということはできない。論旨は、いずれも採用することができない。

三  よって、本件再抗告は理由がないからこれを棄却することとし、再抗告費用の負担について民訴法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官原健三郎 裁判官伊藤紘基 裁判官杉山正己)

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